はじめに
絶好調のAIと広がるAIバブルへの警戒感
2026年、株式市場は二極化の中にあります。一方ではAIブームの主役であるNVIDIAが圧倒的な業績を叩き出し続けていますが、もう一方では賢明な投資家たちが「このお祭りはいつまで続くのか?」と1990年代後半のドットコムバブル以来の強い警戒感を抱き始めています。
業績と期待値
AI開発に欠かせない半導体(GPU)を牛耳るNVIDIAの勢いは、2026年に入っても衰えないでしょう。最新の公表データによると、2026年度(2025年〜2026年初頭)の売上高は2,100億ドル(約31兆円)を突破する見込みで、前年から約60%以上も成長しています。
しかし、株価が絶好調だからこそ大きなリスクが浮上しています。それはバリュエーションの伸びすぎです。2026年初頭の米国の代表的な株価指数(S&P 500)の予想PER(株価収益率)は、過去の平均(約18倍)を大きく上回る23〜25倍という非常に高い水準で推移しています。これは将来の成功を今のうちに多めに買いすぎている状態。つまり、期待値が実力よりも先に空高く昇ってしまっていることを意味します。
AIバブルへの警戒:ドットコムバブルの再来か?
多くの経済専門家や国際機関(IMFなど)が、2026年の最大のリスクとしてAI投資の収益化の遅れを指摘しています。
• 巨額投資のゆくえ: MicrosoftやGoogleなどの巨大IT企業はAIのために年間数兆円規模の投資を行っています。しかし、投資に対して実際にどれだけの利益が上がっているのか?という問いに対し、明確な答えを出せる企業はまだ多くありません。
• 投資家の心理: ドイツ銀行などの最新レポートでは、プロの投資家の半数以上が「2026年の最大のリスクはAIバブルの崩壊だ」と回答しています。
今、市場で起きていること
現在は「AIという技術自体は素晴らしいが、株価に期待が込められすぎていて、少しのつまずきで大きく値下がりしかねない」という、非常に繊細なバランスの上に成り立っている状況です。
1. AI銘柄は「割高」か? 一次データから読み解く強気の根拠
投資の世界には「これだけ稼いでいるなら、株価が高くても納得だ」という強気の見方があります。その最大の根拠が、NVIDIAの圧倒的な決算数値です。
① 前年比+62%の衝撃:売上高570億ドルの正体
2025年11月に発表された「2026年度第3四半期決算」において、NVIDIAは売上高570億ドル(約8.5兆円)という驚異的な数字を記録しました。
• 驚異の成長率: 前年同期と比べて62%も売上が増加しています。これほど巨大な企業が、ベンチャー企業のようなスピードで成長を続けているのは歴史的にも稀なケースです。
• データセンター部門が主役: 売上の約9割(約512億ドル)が、AI開発に使われるデータセンター向け製品から生まれています。世界中の巨大IT企業(Microsoft、Meta、Googleなど)が、競ってNVIDIAのチップを買い求めている実態が浮き彫りになりました。
② 次世代チップ「Blackwell」が変える2027年の景色
投資家が現在最も注目しているのは、2026年から本格的に市場投入されている次世代AIチップBlackwell(ブラックウェル)です。
• 「完売」状態の需要: ジェンセン・フアンCEOは「Blackwellの需要は想定を遥かに超えており、生産が追いつかない」と明言しています。
• 2027年度に向けた5000億ドルの可視性: 一部の市場分析や供給網のデータによれば、2027年度(2026年2月〜)にかけて、NVIDIA関連の累積需要は5000億ドル(約75兆円)規模に達するとの予測も出ています。
• 圧倒的な利益率: 粗利益率(売上から原価を引いた利益の割合)は約73〜75%という極めて高い水準を維持しています。10,000円売ったら7,500円が利益になるような、驚異的な「儲かる仕組み」を構築しています。
ワンポイント:なぜ「強気」になれるのか?
多くの投資家が「株価はまだ上がる」と考える理由は、AIブームはまだ始まったばかりでNVIDIAのチップなしではAIは作れないという物理的な独占状態があるからです。
AI時代のゴールドラッシュ
19世紀のゴールドラッシュで最も儲かったのは金を探した人ではなく「スコップとジーンズを売った人」でした。現在のAIブームにおいて最強のスコップ(チップ)を売っているのがNVIDIAであり、そのスコップが世界中で足りていないため高くても売れ続けているのです。
2. 「割高」と判断される3つの決定的根拠:期待と現実のギャップ
NVIDIAの業績が良いからといって、すべてのAI関連銘柄が安全とは限りません。2026年現在、市場には「期待だけが先走り、中身が追いついていない」という不穏な兆候がいくつか見られます。
① 「幻滅期」の入り口:収益化の遅れ
米国の調査会社ガートナー社が提唱するハイプ・サイクル(技術の普及プロセス)という考え方があります。これによると、新しい技術は一度「過度な期待」で株価が急上昇した後、現実との差に気づいた投資家が離れる「幻滅期」という調整期間を迎えます。
• 莫大なコスト: 2026年までに大手企業(MicrosoftやUBSの予測など)によるAI設備投資は年間5,000億ドル(約75兆円)を突破する見込みです。
• 見えない利益: これほどのお金を使っているのに、一般の企業が「AIを使って利益が劇的に増えた!」と報告する例は、まだ一部に限られています。
• 投資家の視点: 2026年の市場では、AIを作っている会社は儲かっていますが、AIを使っている会社が元を取れるかどうかに強い疑問の目が向けられています。
② 歴史的な「一極集中」と割高な指標
現在、米国の代表的な株価指数であるS&P 500の時価総額のうち、AI関連を含むITセクターが約3割を占めるという歴史的な集中状態にあります。
• PER(株価収益率)の異常値: S&P 500全体の予想PER(株価収益率)は23〜25倍に達しています。過去の平均が約18倍であることを考えると、1円の利益に対して、過去より30%〜40%も高い値段を払って株を買っている状態です。
• 下落のサイン: ダイヤモンドZAiなどの最新予測(2025年12月時点)では、2026年は中間選挙の影響もあり、株価が10%程度下落する場面があるとの警戒感も示されています。
③ 機関投資家の存在
プロの投資家たちは、一般の投資家よりも早くバブルの崩壊を警戒し始めています。
• リスク意識の逆転: 2025年までは、AI株を持っていないこと(乗り遅れること)が最大のリスクでしたが、2026年現在は、AIバブルが崩壊する際に逃げ遅れることが最大のリスクだと、多くのプロが考えています。
• 循環取引の懸念: 一部のレポートでは、AI企業同士でお互いに製品を買い合って売上を水増ししているのではないか、という「循環取引」への疑念さえも議論され始めています。
なぜ「割高」だと考える投資家がいるのか?
それはAIがもたらす未来は明るいけれど、今の株価は「その未来が明日にもやってくる」かのような急ぎすぎた値段になっているからです。
3. AI銘柄が調整局面に入った際の「安全な避難先」
もしAI銘柄の株価が急落しても、すべての資産が下がるわけではありません。大切なのはAIという流行から離れ確かな実利や実物としての価値がある場所に資金を移すことです。
① 実益を伴うAIユーザー銘柄(伝統的優良株)
今まではAIを作る会社が注目されてきましたが、これからはAIを使って得をした会社が投資対象になります。
• どんな企業か: 製薬、生活必需品、伝統的な製造業などです。
• 安全と言える根拠: これらの企業はAI銘柄のような「将来の夢」で株価が上がっているのではなく、毎日の売上や配当という「目に見える実績」で評価されています。
• メリット: 「AIを用いて新薬の製造工程における手間を省いた」や「工場の電気代を3割減らした」という企業は景気が悪くなっても利益が残るため、株価が下がりにくいという特徴があります。
② 高格付け債券(国債など)
「株が危ないなら、債券へ」というのは投資の鉄則です。
• どんな商品か: アメリカや日本などの政府が発行する国債や、倒産リスクの極めて低い大企業の社債です。
• 安全と言える根拠: 2026年、米連邦準備制度が利下げを進める中、高い利回りが確定している債券は非常に魅力的な商品になります。
• メリット: 株価が暴落しても、債券は「決まった利息」がもらえるため、お財布のクッション役になってくれます。特に米国10年国債などは、世界で最も安全な資産の一つとされています。
③ コモディティ(とくにゴールド)
形のない株価の価値が疑われるとき、人は形のある実物に価値を見出します。
• どんな商品か: 金(ゴールド)や、データセンターの電線に使われる銅などです。
• 安全と言える根拠: 金は無国籍通貨と呼ばれ、特定の企業の業績に左右されません。IMFなどの公的機関も地政学リスク(戦争や対立)が続く2026年において、金の保有をリスク回避の手段として推奨しています。
• メリット: AIバブルが弾けて「ドルの価値」や「株の価値」が信じられなくなったとき、金の価格は逆に上がる傾向があります。
4. 2026年の投資家が取るべきスタンス
AIの未来を信じるのは素晴らしいことですが、2026年は「全財産をAIに賭ける」時期ではありません。
成功のカギは両者に投資
AI銘柄に投資する場合は、なるべくコモディティも所持しておくようにしましょう。NVIDIAなど、本物の実力を持つAI株を持つ場合、金などの安全資産も所持します。
こうすることで、AIブームが続けば利益が得られ、万が一バブルが弾けても致命傷を負わずに済みます。
おわりに
投資で一番大切なのは、みんなが熱狂しているときに、一人で冷めた目を持つことです。2026年は、AIという魔法の杖が本当に利益を生む魔法なのか、それとも、ただの高い杖なのかを見極める、冷静な目を持つ投資家が最後には笑顔でいられる年になるでしょう。


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